その時リーロフのぐにゃぐにゃした体が、急に化石のようにかたくなった。
「おや?」
 彼の口から、おどろきの言葉がとびだした。彼は右手をつとのばすと、太刀川の方を指さして、
「おい、そこにいるのは何者だ。名前をなのれ」
 太刀川は、ぎくんとした。なぜリーロフは自分をうたがったんだろうか。
「当番の一等水兵マーロンであります」
 とっさの返事だった。
「なに、マーロンだって。ふふん、おれをだまそうと思っても、そうはゆくものか」
 というと、隊員の方をふりかえり、
「おい、みんな。あそこにおれの潜水服を着ているあやしい奴をとりおさえろ。胸のところに、これと同じように大佐の縞がついている潜水服を着ている奴だ!」
「しまった!」
 太刀川は、思わず声に出して叫んだ。潜水服のところに、妙な縞模様がついていると思ったが、これは共産党大佐の徽章《きしょう》であったか。


   太刀川あやうし


 太刀川時夫は、海底にでることができたけれど、彼のきていた潜水服が、リーロフのものだったために、共産党大佐の縞模様がついていた。それをリーロフに見つけられたのである。
 海の底であるから、陸上のようにすば
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