いかぎり、君がいかに勇敢でも、この海底要塞からは、ぬけだすことは出来ないのだよ。しかも、われわれと同じ目的のために、一しょに働いてくれさえすれば、莫大なお礼が、君のものになるのだ。ね、太刀川君。こんなわかりやすい道理を、わきまえぬ君でもないであろう」
 だが、太刀川は、
「ふん」とせせら笑って、
「いや、よくわかった。だが、ケレンコ君、重ねていうだけ無駄だ。僕は君の申し出にどうしても従うことは出来ない。そのため、君が、僕の命がほしいというなら、勝手にうばいたまえ。僕には、僕の覚悟があるのだ」
 断乎としていいはなった。
 すると、今まで強《し》いておだやかによそおっていたケレンコは、いよいよ仮面をぬいで来た。
「そうか」
 あきらめたようにつぶやくと、顔色がにわかにけわしくなった。怒をふくんだ目が、太刀川をじーっと見つめた。
「よい度胸じゃ」
 皮肉な口もとに、うすきみ悪い笑をうかべながら、
「それじゃ、可哀そうだが、君ののぞみ通り、命をもらおうか」
 目で合図をすると、左右にいながれた部下たちは、無言のまますーと立ち上った。と同時に、黒服の下からニューッとつき出された十挺の拳銃、その
前へ 次へ
全194ページ中106ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング