太刀川君、何もそんなこわい顔をしなくてもよろしい。実は君に、折入って相談したいことがあって来てもらったのだが……」
その声を聞くと、太刀川はぎくっとした。
おう! 聞きおぼえのあるその声、まさかと思ったが、……
太刀川は、目をかがやかしながら、
「そういうあなたは、共産党太平洋委員長、ケレンコ」
暴風雨の太平洋上にとびおりたあのケレンコだ。
「いかにもお察しの如く……」
首領は覆面をとった。まぎれもなく、あの赤ら顔、あの大髭、あの鷲鼻、まさにケレンコである。
「太刀川君。そう驚くには及ばない。今君の案内をつとめたのが、おなじみの潜水将校リーロフなのだ。クリパー号の中では、君にうまくやられた形だったが、そのまま、まいってしまう我輩ではないのだ。クリパー号の進路には、われ等の快速潜水艦が、ちゃんと配置されていたのだ。我輩もリーロフも、落下傘で降りると、着水と同時に、それに救助された。リーロフかい。彼はなるほどクリパー号から、まっさかさまに落ちた。が、途中から洋服下にしのばせた小型落下傘を用いて、これも無事に着水したのだ」
太刀川は、彼等の抜目のないのに、唯あきれるばかりであった
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