「よろしい。君等の宣伝はその位にして、用件というのを承ろうじゃないか」
「ははは……太刀川君。まず腰を下したまえ、君がいかに強くても、もはや我々のとりこだ。生かすも、殺すも我々の意のままだ」
 ケレンコは言葉こそていねいだが、悪魔のような笑をもらしながら言った。
「だがとりこでも、君は大事なとりこだ。われわれは、われわれの目的のために、君をわざわざここまでつれて来たといってもよいのだ。君が、原大佐の頼みで、南洋にむかったと、スパイからの知らせによって知ったとき、一時はこれは困ったことになったと思った。だが、われわれはやがて、君をとらえて、君のすぐれた頭と、君の海洋学の知識を、われわれの目的のために逆に利用することを思いついたのだ。いや、君の頭と、君の海洋学は、絶対に必要なことがわかったのだ。
 われわれは日本をのっ取るために、おどろくべき熱心さで、長い間共産主義の思想をふきこんで来た。が、無駄であった。君等のいう日本精神は、びくともせず、この方法によるわれわれの計画は、完全に失敗してしまった。やはり、武力戦よりほかはない。しかし、日本には、世界無比の強大な陸海軍がある。通り一ぺんの
前へ 次へ
全194ページ中103ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング