逸《ドイツ》のボッヘ誌によって、昨年紹介された独逸の名人形師の家に、ずらりと並べられた身体の真白な女性の人形をみていると、なんだか、妙な興奮と、寒気を覚えたことであった。
     *   *
 さて、今日云うところの人造人間《ロボット》の方は、今のところ、甚だ志操堅固《しそうけんご》な、いわゆる堅造《かたぞう》ばかりで、性的サーヴィスをやって呉れるのは、ないようである。
 今日の人造人間をはじめ、多くの人造ものを産んだのは、このところ五十年ばかりの間に、異常な発達をとげた電気工学、物理化学のおかげである。
 人造人間は、まず措《お》くとするも、人造|絹糸《けんし》、人造酒、人造染料、人造肥料、人造光線、人造真珠、人造宝石、などと、数えてゆけば、きりがない。これ等の造品《ぞうひん》は、天然物の模造として代用品の役目をつとめるばかりではなく、天然物より勝《すぐ》れた点を多く持っている。人絹だと最初は、軽蔑せられた人造絹糸も、今日は天然絹糸と肩を並べて工業界に進出し、天然絹糸と人造絹糸とは、製品としての分野がはっきりわかれ、お互に持ちつもたれつの発展をつづけている。
 人造染料が、天然染料
前へ 次へ
全20ページ中6ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング