さまだぞ。近寄って大事な稲を食うと、からき目にあわせてやるぞ」と威張ったが、雀の方では、二三度は鳴子《なるこ》というトーキー式演出に驚かされたが、早くも、それが人造人間であることを看破し、その後は案山子の上に糞《ふん》をしかけるという仇討《あだうち》まで、やらかした。
* *
京人形は、伝説ながらも、完全なる人造人間として、その頃まではスタティックな人形が、遂にダイナミックな人形となって、左甚五郎氏に奉仕したのであった。
これに類したものでは、泪《なみだ》で床の上に画いた鼠が、本物の鼠になったとか、屏風《びょうぶ》の虎がぬけ出したとか、襖《ふすま》の雀が毎朝庭へとび降りて餌を拾った、などという話もある。
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人形のうまく出来上ったものには、魂が入るのだといい、江戸川乱歩氏は、「人でなしの恋」を書かれて、人形に恋した男が蔵の中で、人形とホソボソ睦言《むつごと》を囁き、あげくの果は、美しい夫人を残して、その人形と情死するという筋を描かれた。
花屋敷には、普段の入場客と寸分たがわぬ人形が園内に置いてあって、奇怪なエピソードを幾度となく作っている。
独
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