に、私の苦心の要《い》ったことと申したら、主席によろしくお察し願いたい」
「それはよろしく察して居る。褒美《ほうび》には、何をとらせようか。カンガルーの燻製はどうだ」
「いや、カンガルーは動物園のような臭《にお》いがしていけません。――いや、それはともかく、想像していた以上に、これは実に立派にひかれた製図でございますが、更にその内容に至っては、正に世界無比の強力兵器だと申してよろしいと存じます」
「それで、わしには鳥渡《ちょっと》分らんところもあるから、お前、この図について、報告せよ。一体、“人造人間戦車”とは、どんなものか」
 とにかく御大将《おんたいしょう》ともあれば、威厳《いげん》をそこなわないことには、秘術を心得て居る。
「はは。そもそも金博士の発明になる人造人間戦車とは……」
 油学士は、前後左右、それに頭の上を見渡し、砂漠の真中の一本のユーカリ樹《じゅ》の下には、主席と彼との二人の外、誰もいないことを確かめた上で、
「……人造人間戦車とは、ソノ……」
「早くいえ。気をもたせるな。褒美は、なんでも望みをかなえさせるぞ」
「はい、ありがとうございます。さて、その人造人間戦車とは
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