人造人間戦車の機密
――金博士シリーズ・2――
海野十三

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)魔都《まと》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)密使|油蹈天《ゆうとうてん》氏
−−

     1


 魔都《まと》上海《シャンハイ》に、夏が来た。
 だが、金博士《きんはかせ》は、汗もかかないで、しきりに大きな手押式《ておししき》の起電機《きでんき》を廻している。室内の寒暖計は、今ちょうど十三度を指している。ばかに涼《すず》しい室《へや》である。それも道理《どうり》、金博士のこの実験室は、上海の地下二百メートルのところにあり、あの小うるさい宇宙線も、完全に遮断《しゃだん》されてあるのであった。
 天井裏のブザーが、奇声《きせい》をたてて鳴った。
「ほい、また来客か。こう邪魔をされては、研究も何も出来やせん」
 博士は、例の無精髭《ぶしょうひげ》を、兎《うさぎ》の尻尾《しっぽ》のようにうごかして、天井裏を睨《にら》みつけた。
「博士、御来客です。醤買石閣下《しょうかいせきかっか》の密使《みっし》だそうです。はい、只今、X線で、身体をしらべてみま
次へ
全23ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング