ざいます。それを下されば、このカンガルーの燻製を置いてまいります。下さらなければ、折角《せっかく》ですが、カンガルーの燻製は、再び私が背負いまして……」
「わかったよ、もうわかった。あの醤め、わしが、珍味に目がないことを知っていて、大きなものをせびりよる。よろしい。では、その設計図をやろう。これが、そうだ。組立のときには、わしに知らせれば、行って指導してやってもいい。しかしそのときは、うんと代償物《だいしょうぶつ》を用意して置けよ」
 そういって、金博士は、大きな青写真にとった設計図を、惜《お》し気《げ》もなく密使に渡してしまったのであった。


     2


 有頂天《うちょうてん》になって、“人造人間戦車”の設計図を押し戴《いただ》いて、三拝九拝しているのは、珍らしや醤買石《しょうかいせき》であった。
 醤は、サロン一つの赤裸《あかはだか》であった。頸《くび》のところに、からからんと鳴るものがあった。それはこの土地に今大流行の、獣《けだもの》の牙《きば》を集め、穴を明けて、純綿《じゅんめん》の紐《ひも》を通した頸飾《くびかざ》りであった。醤は、このからからんという音を聞くたびに
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