前には、百万を数える人造人間が、林のように立って居り、その望楼の後には、これは赤い血の通った醤軍百万の兵士たちが、まるでワールド・シリーズの野球観覧をするときの見物人のような有様《ありさま》で、詰めかけていた。
 雲霞《うんか》のような原地人軍は、ついに前方五千メートルの向うの丘のうえに姿を現した。
「おい、油学士。もう人造人間をくりだしてもいいじゃろう」
「はい。只今、命令を出します」
 命令は出た。
 人造人間部隊は、たちまち一せいに手足をうごかして、前進を開始した。冷い灰白色《かいはくしょく》の身体が、夕陽をうけて、きらきらと、眩《まぶ》しく輝く。
 この人造人間は、精巧なる内燃機関で動くのであって、別に不思議はない。
 人造人間部隊が粛々《しゅくしゅく》と行軍を開始して向ってきたので、原地人軍は、さすがにちょっと動揺《どうよう》を見せた。が、先登《せんとう》に立つ勇猛果敢《ゆうもうかかん》な酋長は、槍を一段と高くふりまわして、部下を励ました。
 人造人間部隊は、粛々と隊伍を組んで進む。どこか算盤玉《そろばんだま》が並んだ如くであった。
「おい、油学士。もう始めてよかろう。わしは
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