、戦争の用意を……」
「そうだ、かの醤軍と闘うんだ。わが村の忠良《ちゅうりょう》にして健康なるお前たちやわしが死骸にさせられない前に、あの醤軍の奴ばらを、あべこべに死骸にしてしまうのだ。どうも前から、いやな奴だと思っていたよ。彼奴《きゃつ》は、おれたちのところから、カンガルーを何頭、盗んでいったかわからない。その代金も、ここで一しょに払《はら》わせることにしよう。それ、太鼓《たいこ》を打て、狼烟《のろし》をあげろ」
「へーい」
とんだことから始まって、たちまち戦雲はふかくサンデー砂漠の空にたれこめた。
村の騒ぎは、醤軍の方へも知れないでいなかった。
醤主席は、重工業地帯からちょっと放れたところにある望楼《ぼうろう》へのぼって、村の様子を見渡した。
太鼓は、いやに無気味な音をたてて鳴り響いている。九本の狼烟は、まるで竜巻のコンクールのように、大空を下から突きあげている。その合図をうけとった原地人が、砂漠の東から西から南から北から、蟻《あり》のように集り寄ってくるのが見られる。なんという夥しい数であろうか。千や二千ではない。すくなくとも万をもって数える夥しい原地人の数であった。
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