う》のところへ、とびこんできた。
「なんじゃ、騒々《そうぞう》しい」
「たいへんもたいへん。あの醤《しょう》なんとかいう東洋人の邸《やしき》の中には、死骸《しがい》が山のように積んであります。あの東洋人は、弱そうな顔をしていたが、あれはおそろしい喰人種《しょくじんしゅ》にちがいありません。たいへんなものが、移民してきたものです」
「えっ、それは本当か。死骸が山のように積んであるって、どの位の数《すう》か」
酋長は、盃《さかずき》を手から取り落として、胸をおさえた。
「その数は、なかなか夥《おびただ》しい。ええと、どの位だったかな」
「そうさ、あれは、たいへんな数だ。九つと、九つともう一つ九つと、九つとまだまだ九つと九つと九つと……」
斥候は、汗を額からたらたらと流しながら、妙な方法で数を数えた。
それを聞いている酋長の方でも、だんだん汗をかいてきた。
「もう、そのへんでよろしい。お前のいうところによるとこれはたいへんな数である。わしが生れてこの方《かた》、この眼で見た鳥の数よりもまだ多いらしい。よろしい、これは、ぐずぐずしていられない。者共《ものども》、戦争の用意をせよ」
「えっ
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