ょう」
「さあ、どこでしょうか、もしかすると……」
「もしかすると……」
「運転手、三十番街を左に曲れ。真直《まっすぐ》走ると殺されちまうぞ」僕は圧《お》しつけるように命令した。車はもう三十番街に来ていたので、四《よ》つ角《かど》を急角度に旋回した。その途端《とたん》に、僕たちの車の後に迫っていた高速度のイスパノ・シーサなどの車が数台、三十一番街に滑《すべ》りこんだ。俄然《がぜん》一大爆音が彼等の飛びこんだ方面に起った。僕たちの車の硝子《ガラス》が、護謨《ゴム》毬《まり》をたたきつけたかのようにジジーンと音を立てた。
 何事か起ったらしい。この儘《まま》、通りすぎたものか、引きかえしたものか。先刻《さっき》、窓からのぞきこんだ人造人間《ロボット》らしきものは、同志林田が活動を開始したのを語っている。三十一番街の爆発事件も、彼の手で決行されたものに違いない。だがその地点に、そんなに必要な事件を指令した覚えはないので、鳥渡《ちょっと》、事件を解釈するのに見当がつかなかった。これは引返して、様子を見たいものだ、と思ったが、劉夫人は、僕の胸にピッタリ顔をおしつけて離れない。彼女は、なんでも自分
前へ 次へ
全22ページ中11ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング