人造人間《ロボット》殺害《さつがい》事件
海野十三

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)人造人間《ロボット》殺害《さつがい》事件

|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)又|平生《へいぜい》は

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、底本のページと行数)
(例)[#次の段落には、天地左右にオモテケイ囲み]
−−

 その早暁《そうぎょう》、まだ明けやらぬ上海《シャンハイ》の市街は、豆スープのように黄色く濁った濃霧の中に沈澱《ちんでん》していた。窓という窓の厚ぼったい板戸をしっかり下《おろ》した上に、隙間《すきま》隙間にはガーゼを詰めては置いたのだが、霧はどこからともなく流れこんできて廊下の曲り角の灯《あかり》が、夢のようにボンヤリ潤《うる》み、部屋のうちまで、上海の濃霧に特有な生臭《なまぐさ》い匂いが侵入していたのであった。
 その日の午前五時には本部から特別の指令があるということを同志の林田《はやしだ》橋二《はしじ》からうけたので僕は早速《さっそく》、天井裏《てんじょううら》にもぐりこみ、秘密無線電信機
次へ
全22ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング