の目盛盤《ダイヤル》を本部の印のところにまわしたところ、果して、一つの指令に接した。こんどの指令は近頃にない大物だ。

[#次の段落には、天地左右にオモテケイ囲み]
 JI13ハ直チニ海龍《かいりゅう》倶楽部《クラブ》副首領「緑十八」ヲ殺害スベシ。但シ犯跡ヲ完全ニ抹殺スベキモノトス。本部JM4指令。

 この意味を、暗号電文の中《うち》から読みとったときには、常にも似ず、脳髄がひきしめられるような気がした。緑十八といえば、秘密結社海龍倶楽部の花形闘士の中でも、昨今中国第一の評ある策士。辣腕《らつわん》と剽悍《ひょうかん》との点においては近代これに比肩《ひけん》する者無しと嘆《たん》ぜられているひと。しかしいつも覆面しているので顔も判らず、又|平生《へいぜい》は、どんな生活をしているひとなのだか、それも殆んど判っていない。一体、この海龍倶楽部は、表面は一秘密結社ではあるけれども、その背後には某大国の官憲の庇護《ひご》があり、上海の警視庁と直通しているといわれ、何のことはない、某大国と中国警察との共同変装のようなものである。だから、その海龍倶楽部の副首領を暗殺するということは、非常に困難な
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