苦心してつくったこの岩窟を、こんな風にこわせとは、命令されなかったのでしょうにねえ」
「うむ。それは……」
「博士。エフ氏を、このまま放《ほう》っておいて、それでさしつかえないのですか。エフ氏に勝手なことをさせておいていいのですか。もしやエフ氏が、海の中へとびこんだとしたらどうでしょう。たちまち海水が、身体の中の器械をぬらしてしまって、動かなくなるでしょう、そうなれば、折角《せっかく》の人造人間が、だめになってしまいます」
「海水ぐらいは平気じゃ。いや、これは……」
と、口をおさえたが、この博士の言葉から考えると、人造人間は、水にぬれても大丈夫《だいじょうぶ》のようにできあがっているらしい。どこまでもよくできた人造人間だった。
人造人間《じんぞうにんげん》の操縦
博士は、急に、そわそわしはじめた。立ってもすわってもいられない様子だ。帆村探偵は、正太の方に、目配《めくば》せをした。
正太は、帆村の顔色を察して、だまって、うんうんとうなずいた。
「ねえ、博士。人造人間が、こわれないうちに、この操縦器をつかって、おとなしく呼びもどしておいたがいいでしょう」
「うん、それは
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