そうだが、わしの手は動かない。この縄をといてくれ」
「はははは。あなたの方でといてくれといいだしましたね。しかし、とくことはなりません」
「なぜとかないのか。とかないと、人造人間は大あばれにあばれて、今に、日本の国民全体が、大後悔《だいこうかい》しても、どうにもならんような一大事がおこるが、それでもいいのじゃな」
「博士、おどかしは、もうよしてください」と帆村はひややかにいい放った。
「なるほど、あなたの手は動きません。しかし口は利けるのですから、口でいってください。僕がそのとおりに、操縦器のスイッチを切ったり入れたりしましょう」
「ははあ、分った。貴様、人造人間の操縦法を、わしから聞きだそうというのじゃな」
「そうです。早くいえば、そうです」
 博士は、しばらく考えこんでいた。が、やがてその面上《めんじょう》には、決心の色がうかんできた。
「仕方がない。わしの知っていることを、君におしえてやろう」
 博士の考えが、たいへん変った。帆村に、人造人間の動かし方をおしえるという。そういう博士の心変りの奥に、どんなおそろしい計略があるのか、決して油断はできなかったが、とにかく今、人造人間エフ
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