を、なぜそんなに僕に見せたがるのですか」
「うふん、それは――それはつまり世界中で一番すぐれた人造人間だからです。いままでの人造人間は、ゴリラか巨人のように大きかったですが、人造人間エフ氏は、たいへん小さくできています。日本語も、私たちより、なかなかよく話します」
「へえ、日本語を話すのですか、その人造人間エフ氏は――」
「そうです。日本語のほか、英語でも、ロシヤ語でもよく話します。十三ヶ国の言葉を喋《しゃべ》ります。なかなか私、苦心しました」
 博士は鍵を出して、扉《ドア》の錠《じょう》をはずした。
「どうぞ、おはいり下さい」
 紫色の電灯がついている。なにかじいじいじいと妙な音がしている。よく見ると、電灯の下に、椅子に腰をかけている人間の形をしたものがあった。しかしそれは、変なことに、まるで受信機の中のように沢山の針金が重なりあって、人間の形を保っているだけのものであった。
「エフ氏って、あれですか」
「そうです。エフ氏は、まだ中身だけしかできていましぇん。まだあの上に、肉をつけ、そして皮をかぶせ、人間に見えるようにいたします。まだできあがっていないのです。しかしよく動きますよ。さ
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