永いあいだ二人の子供にあわないので帰ってほしいといってきた。そこで二人は近く日本へかえることになったのだ。このことは、うちで決めただけで、まだ領事館へもソ連の官憲へも知らせてないのに、はやくもイワノフ博士がそれを知っているとはおどろいたことだった。
「では、人造人間《ロボット》エフ氏だけ見て、それでおかえりくださーい。マリ子しゃん、恐ろしいですか。恐ろしければ、あなたは部屋の外でお待ちくださーい。正太しゃんだけ、見ていただきます。正太しゃん、きっと感心してくれます」
 博士は、にこにこ顔で、兄妹の手をとって廊下づたいに奥へ奥へと案内した。
 やがて廊下は行きどまりとなった。
「ここから階段をおりて、地下室へゆきます。マリ子さん、恐ろしいですか。それなら、ここに待っていてください。そこから庭へでてもよろしいです」
「じゃ、マリちゃん。ここで待っててね。僕が来るまで、どこへもいっちゃいけないよ」
「ええ、待っているわ。できるだけ早くかえってきてね、兄さん」
 マリ子は拝《おが》むようにいった。正太は博士につれられて、うすぐらい階段をおりていった。
「博士、人造人間《ロボット》エフ氏というの
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