であるのに、こんなところに倒れているとは、一体どうしたことであろうか。
「帆村さん、しっかりしてください」
 正太は、あたりを警戒して、こえを忍《しの》ばせながら耳もとに口をつけて、帆村の名をよんだ。
「ううーっ、あっくるしい」帆村はやがて気がついた。
「おや、正太君か」
「ええ、そうです」
「うむ、本物の正太君じゃないか。こんな危いところへどうしてきたのか」
 帆村は名探偵といわれるだけあって、正太が本物の正太であることをすぐ見破った。
「僕たちは人造人間の足あとを追いかけて、ここまでやってきたんです。帆村さん、ここは危いところなのですか」
「そうだ。あまり大きいこえを出してはいけない」と油断なくあたりを見まわして「僕は、この巌《いわお》のうえで、もうすこしで大木老人にピストルで射殺されるところだったよ。あの巌のうえから落ちて、ふしぎに一命を助かったのだ」
「えっ、大木老人もここへやってきたんですか」
「そうだとも。どうやらここは、人造人間エフ氏やイワノフ博士の秘密の隠《かく》れ家《が》らしい」
「えっ、イワノフ博士ですって」
「正太君、僕はあの大木老人が実はイワノフ博士の変装だとい
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