、もしや人造人間がこの雑草づたいに巌のうしろへまわったのではないかと思い、草を踏んで巌の横手へまわった。すると、彼は、たいへんなものを発見した。
「あっ、誰か倒れている」
背広服を着た男が、うつむけになって倒れていた。誰かしらと思って、正太は傍《そば》へかけより、倒れている男の肩に手をかけようとして、はっと胸をつかれた。
「血だ、血だ! 死んでいる?」
洋服のズボンが血にそまっている。よく見ると、草までも、血によごれているではないか。
正太は、うしろをふりかえったが、そこにはまだ大辻の姿も見えない。やむをえず正太は、すこしおそろしかったけれど、倒れている男のうしろに手をまわして抱きおこした。男のからだには、まだ温味《あたたかみ》があった。正太が彼のからだをうごかすと、その男はかすかに呻《うな》った。
正太は思わずその男の顔をのぞきこんだ。そしてのけぞるくらいにおどろいた。
「あっ、これはたいへん。帆村探偵、どうしたんです!」
意外とも意外、人造人間の足あとが消えた巌の横にまるで死んだようになって横たわっていたのは、帆村探偵だったのである。彼は、大木老人のあとをつけて行ったはず
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