よし、それならいい。さあ、この足あとについて、どんどん追いかけていこうよ」
「ああ、それもわるくないだろう。が、どうも今日はだいぶん疲れたね。第一腹が減って、目がまわりそうだ」
「あれっ、強いといばった人が、もはやそんなに弱音をふくんじゃ、やっぱり弱虫の方だね。いいよ、大辻さんはここにおいでよ。僕一人でたくさんだ。一人で行くからいいよ」
正太は、ひとりでどんどん走りだした。
これを見た大辻は、大あわてで、そのあとから不恰好《ぶかっこう》な巨体をゆるがせて、正太についてくる。正太は一生けんめいだ。ものもいわないで、ひたすら人造人間エフ氏とマリ子の足跡とをつたって、いよいよ山ふかく入ってゆく。
いつしか太陽の光は木々の梢《こずえ》によってさえぎられ、夕方のようにうすぐらくなってきた。山の冷気がひんやりとはだえに迫る。名もしれない怪鳥《かいちょう》のこえ!
巌《いわお》にちる血痕《けっこん》
「そんなにのぼっていって、それでいいのかね。横合《よこあい》から人造人間がわーっと飛びだしたらどうするのかね」
大辻は、あいかわらず、びくびくもので正太の後からのぼってゆく。正太は
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