しかに病気になって死ぬよりほかに道がなかろう。帆村探偵も、それを知らぬではあるまいのに、マリ子の方を追いかけないで、大木老人の方を追っていくとはなんという見当ちがいなことであろう。正太の胸の中には、しばらくわすれていた心配がまたどっと泉のようにわいてきた。
「大辻さん。ぐずぐずしていると、間にあわないかもしれない。さあ、すぐ行こうぜ」
「行こうって、どこへ」
「わかっているじゃないか、人造人間エフ氏の手からマリ子を奪いかえすんだよ。今日中にそれをやらないと、かわいそうにマリ子は死んじまうんだ」
「ええっ、今から人造人間のあとを追うのかね。やがて山の中で日が暮れてしまうがなあ」
「ずいぶん弱虫だなあ、大辻さんは。僕の何倍も大きなからだをしているくせに、そんな弱音《よわね》をはいて、それでよくも、はずかしくないねえ」
「じょ、冗談いっちゃいけない。わしは山の中でやがて日が暮れるだろうと、あたり前のことをいったまでなんだ。からだが大きければ力も強い。人造人間をおそれたりするような弱虫とは、だいたいからだの出来具合からしてちがうんだ」
大辻は、へんなことをいって、しきりに強がってみせた。
「
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