におえない奴だということさ」
そういっている間にも、正太は山道のうえをしきりにきょろきょろ見まわしていたが、このとき大きなこえで叫んだ。
「うむ、マリ子もやっぱり人造人間エフ氏につれられていったのだ。そして二人はこっちの方向へ逃げていった」
「えっ、正太君。どうしてそんなことがわかる」
「だって、ここをごらんよ。マリ子の足あとと、人造人間の足あとがついているじゃないか」
と、地面を指した。なるほど、二つの足あとがある。マリ子の足あとは、まるで宙をとんでいるように乱れていた。それにくらべて、エフ氏の足あとは地面にしっかりあとをつけていた。
「ほほう、お前さんはなかなか名探偵だわい」
大辻は目をまるくして、正太の顔を見なおした。だが、正太はしずんでいた。
「マリ子は、エフ氏のためずいぶんむりむたいに引張られているらしい。このままではマリ子は病気になって死んでしまうにちがいない。今のうちにマリ子をたすけないと、手おくれになるかもしれない」
正太は、誰にいうともなく、しずんだこえでそういった。そうだ、正太のいうとおりである。人間ではない機械に、ぐんぐん引張られてゆくかよわいマリ子は、た
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