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かわいそうなマリ子
「あはははは」「わっはっはっはっ」
正太と大辻とは、しばらくはおかしさに腹をかかえて、笑いがとまらなかった。
「どうだい。大辻さん。よくわかる証拠を見せてやったろう」
「うむ、よく分った。むし歯のある人造人間なんて聞いたことがないからね。お前さんのむし歯も、ふだんは困ったものだが、こういうときにはたいへん役に立つよ。わっはっはっ」
大辻は、また大きなこえをたてて笑いだした。
これで分った。正太は、自分の口をあけて、大辻にむし歯を見せたのであった。人造人間にむし歯があるはずはないから、それで正太がエフ氏でないことが分ったのである。
「それはいいが、大辻さんはエフ氏を逃がしてしまったらしいね」
「そうなんだ、ちときまりが悪いがね」
「どっちへ逃げたんだろう。エフ氏はマリ子をつれていたかい」
「いいや、マリ子さんは見えなかった」
「じゃマリ子をどうしたんだろう」
「なにしろ、エフ氏というやつは、足も早いし、力もたいへんつよい。じつに強敵だ」
「ははあ大辻さんは、エフ氏がおそろしくなったんだね」
「いや、おそれてはいない。ただ、あの怪物は、よくよく手
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