もせず泣きもせず、人形のようにつったっている。
 これでみると、大辻が正太だと思ったこの少年は正太ではなく、やはり例の人造人間が化けた怪少年だったのだ。正太はどこへいったのだろうか。


   追跡急!


 助手探偵の大辻は、しばらく気をうしなって、山道にころがっていた。そのうちに、なんだか自分の名前をよばれるような気がして、はっとわれにかえった。
「おやおや、わしはこんなところにねころがって、一体なにをやっていたのかしらん」
 と、起きあがりかけたが、急に顔をしかめ、横腹をおさえてその場に尻もちをついた。
「おい、大辻さん。どうしたのさ」
 そういうこえに、大辻は顔をあげると、そこには正太少年が立っていた。
 それを見ると、大辻はびっくり仰天《ぎょうてん》して、あっと叫ぶなり、その場に一メートルほどもとびあがったと思うと、妙な腰つきをして山道を匐《は》うように逃げだした。
「おーい大辻さん。お待ちったら」
 正太が追いかけると、大辻はますますおそろしげに顔色をかえ、
「うわーっ、人殺しだあ。誰か助けてくれ! うわーっ、人殺しだーい」
 と、まことにみっともない騒ぎ方であった。正太に
前へ 次へ
全115ページ中63ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング