もせず泣きもせず、人形のようにつったっている。
これでみると、大辻が正太だと思ったこの少年は正太ではなく、やはり例の人造人間が化けた怪少年だったのだ。正太はどこへいったのだろうか。
追跡急!
助手探偵の大辻は、しばらく気をうしなって、山道にころがっていた。そのうちに、なんだか自分の名前をよばれるような気がして、はっとわれにかえった。
「おやおや、わしはこんなところにねころがって、一体なにをやっていたのかしらん」
と、起きあがりかけたが、急に顔をしかめ、横腹をおさえてその場に尻もちをついた。
「おい、大辻さん。どうしたのさ」
そういうこえに、大辻は顔をあげると、そこには正太少年が立っていた。
それを見ると、大辻はびっくり仰天《ぎょうてん》して、あっと叫ぶなり、その場に一メートルほどもとびあがったと思うと、妙な腰つきをして山道を匐《は》うように逃げだした。
「おーい大辻さん。お待ちったら」
正太が追いかけると、大辻はますますおそろしげに顔色をかえ、
「うわーっ、人殺しだあ。誰か助けてくれ! うわーっ、人殺しだーい」
と、まことにみっともない騒ぎ方であった。正太に
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