が邪魔をしやがる。野ばらめ、消えてなくなれ!」
と、ひとりで文句をいっている。そのうちに時間はたつ、大辻は死にものぐるいで、洋服のズボンをとげでさきながら、突進した。やっと道に出たときには、大辻の手も足も、野ばらのとげでひきさき、血だらけになっていた。見ると、目の前に、少女の手をとった少年がいた。
「こいつだな。おい待て、人造人間の化けた怪少年め!」
とおどりかかろうとすれば、相手は、
「はやまっちゃいけない、大辻さん。僕だよ、正太だよ」
「えっ、正太君か」
「そうだ、いま僕が人造人間をたおして、妹をとりかえしたんだ」
「そうか。そいつはでかした。わしはまた、人造人間め、うまく化けたなと思ったよ。ははは、もすこしで君をなぐり殺すところだった」
と、大辻が笑いだしたとたんに、少年は、拳《こぶし》で大辻の横腹をどんとついた。
「あっ、うむ。き、貴様は……」大辻は、無念そうに歯をばりばりかみあわせたが、少年の拳につかれた横腹のいたみにたえられなくなって、ばったりその場にたおれ、そのまま気を失ってしまった。けけけけ――というようなこえで、正太とばかり思っていた少年は、笑った。マリ子は笑い
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