博士は上機嫌でいって「もっと面白いものあります。いま、手を叩きます」と、博士はぽんぽんと叩いた。
すると、ういういういと鳴き声をたてながら、カーテンの蔭から、一頭の白い豚が走りいで博士の前にぴたりととまった。
「この豚の背中を見てくださーい。背中が卓子《テーブル》になっています」
なるほど、よく見ればおどろくではないか、白い豚の背中は、板を置いたようになっていた。
「この中に、おいしい酒がありまーす。私、命令する。その酒、コップに入って出てきます」
博士が豚の方に手をさしのばすと、豚の背中がぱくりと左右にひらきその下からうまそうな洋酒が盃にはいって、三つも出てきた。そして背中が閉まると、盃はそのうえにちゃんとのっている。豚の身体が、酒をたくわえる倉庫のようになっているのだった。
「いかがです。酒をのんでくださーい」博士は盃をとりあげた。
「いや、僕たちはのみませんから、博士だけでおのみください」
「そうですか。では私もやめまーす、動く卓子《テーブル》をかたづけましょう」
といって博士は豚のお尻をぽんと叩いた。すると豚は向うへかけだした。かけだしながら、また背中が二つに割れて洋酒
前へ
次へ
全115ページ中7ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング