が、あなたがただけ、とくべつに家のなかへ入れまーす」
博士は二人をつれて、大きな建物の扉《ドア》の鍵をはずし、兄妹をなかにみちびきいれた。
不思議な動物
兄妹が、一歩室内に足をふみ入れたとたん、とつぜん「うーう、わわわわ、わん」と足もとに吠えついたものがあった。マリ子はびっくりして、あっと叫ぶなり、正太の腕にすがりついた。見れば、それは一頭の小牛ほどもあろうという猛犬だった。
「これ、ダップ。あっちへゆきなさい」博士は、いきなり足をあげて、犬を蹴った。そのときごとんと椅子を蹴ったときのような音がした。犬は尻尾をまいて、奥の方へにげさった。
「すごい犬をお飼いですね」正太がいった。
「なあに、あれは人造犬《じんぞうけん》あります」
「えっ、人造犬ですか。マリちゃん、あれは人造犬だってさ」
「まあ、人造犬なの。すると機械で組立ててある犬なのね。まるで本物の犬そっくりだわ」
「そのとおり、ありまーす、人造犬がくいつくと、手でも足でも、ち切れます。本当の犬なら、そうはなりません」
「じゃ、本当の犬よりつよいのですね」
「そうですそうです。私、なかなか自慢している人造犬です」と
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