ままうごかなくなった。腕ばかりではない、身体全体がこわばってしまって、まるで木でつくった本当の仁王さまのようになった。
「あれっ、どうかしたよ、この受付は」
と、正太は怪訝《けげん》な顔をしているとき、奥から人波をかきわけながらぜいぜい息を切らせてかけつけた一人の禿げ頭の老人があった。
「ドンや。いけましぇん。ああ正太しゃん、マリ子しゃん、待っておりました。さあさあ、こちらへおはいり、ください。この受付に、いいつけるのを、私、わすれていました」
「ああ、あなたはイワノフ博士ですね」
「そうです、イワノフです。ようこそ、正太しゃんもマリ子しゃんも来てくださーいました。こっちへおいでくださーい」
兄妹は、それみたことかと、受付ドンの方をふりかえったが、そのときドンはいつの間にか入口の人波のなかに立って、知らぬ顔をして整理に一生けんめいのように見えた。
「あれっ、変だなあ」
「さあさあこっちへおいでくださーい。あなたがたに、とくべつ見せたい人造人間《ロボット》などたくさんあります」
「とくべつ見せたい人造人間て、なんです」
「いや、なかなか面白くできたものが、あります。私、誰も入れません
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