あわしたように、二人にこんな風に話しかけた。
二人は、それをきいて、にっこりと笑うのであった。やがてこの正太とマリ子に似た二人づれは、この展覧会で一等呼び物になっているソ連から分捕った新型戦車の前に来た。
正太に似た少年は、その前にずかずかとよると、まるで匂いをかぎでもするように、戦車に顔をすりよせた。それからというものは、正太に似た少年の様子がへんになった。
ちょうどそのとき、二人のあとから入って来た村長らしい見物人を、わざとさきへやりすごすと、正太に似た少年は、俄《にわ》かに目をぎょろつかせ、あたりに気をくばった。マリ子は、人形のように、じっと室の隅に立っていた。ぱちぱちぱちと、とつぜんはげしい音がきこえた。見ると、その呼び物のソ連の新型戦車が火をふいているのであった。よく見ると戦車は真赤に熟しつつ、どろどろと形が熔《と》けてゆくのだ。そして、その前には、正太に似た少年が、大口をあいて、はあはあ息をはきかけている。その息が戦車にあたると、戦車はどろどろと飴《あめ》のように熔けてゆくのであった。
なんというあやしい少年のふるまいであろう。それは人間業《にんげんわざ》とはおもわ
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