う。自分が無電機をこわしておきながら、まだ無電をうたないのかなどとたずねるとは)と、あきれたり、おどろいたり。
「船長さんたちは、海の勇士ではありませんか。しっかりしてください」
正太は、一生けんめいに船長と一等運転士をはげました。
それをきいていた一等運転士は、こころのなかにむっとして、ポケットからピストルをぬきだすと、正太をめがけて、今にも銃口《じゅうこう》をむけそうな気配を示した。そのとき、電話のベルが、けたたましく鳴った。それは正太のために、一命をすくったようなものであった。
「船艙《せんそう》から電話がかかってきたのだろう。おい、なんだ」と、船長が電話にかかった。
「なに、船艙の火事が消えた。それはいいあんばいだ。……ええっ、電気仕掛の口火がみつかったって。それをつかって、荷物とみせかけてあったダイナマイトを爆発させたことがわかったのだって? そいつはおどろいたね。……その電気仕掛の口火を誰がつけたのかわからないって。ふんふん、それはわからんことはないよ」
と船長は、じろりと正太の方に眼をうごかしたが、すぐ眼を元にもどして、
「とにかく、火事の方がかたづいたら、こんどは
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