ら、私のところから逃げだしたとおもったが、そんな早業《はやわざ》をやったか。無電機をこわしたのも、もちろん無電技士をなぐりつけた犯人と同一の人物にちがいない。――というと、正太という少年のことだが、あんなかわいい顔をしていながら、見かけによらないおそろしい奴だな」
「そうです。おそろしい奴です。そしておそろしい力をもった奴です。無電技士を気絶《きぜつ》させたばかりではなく、無電機のこわし方といったら、めちゃめちゃになっていまして、大人だってちょっと出ないくらいの力をもっているんですよ、あの正太という子供は!」
怪少年?
正太はそんな力持であろうか。
船長と一等運転士とは、正太のおそろしい力に身ぶるいをしていると、そこへひょっこりと、正太少年が顔をだしたものだから、二人は、あっといって、二三歩うしろへよろめいた。
「船長さん。まだ日本の軍艦はこないんですか」
「えっ?」
「船長さん、SOSの無電はうったのですか。それともまだうたないのなら、早くうってはどうですか」
船長と一等運転士とは、顔をみあわせた。そして二人とも心のなかで、(この少年は、なんという図々しい少年だろ
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