せているのか、わからんのじゃ。ただわかることは、これからきっと、この船になにかたいへんなことがおこるだろうということだ」
そういっているとき、また一つ、へんなことがおこった。――老紳士のいったとおりだった。そのへんなことというのは、誰がやったのかしらないが、船のうえから海のうえにむかって、ボールのようなものがぽんぽんと二つ、なげられた。そのボールは、海のうえへおちると、どういう仕掛がしてあったのか、たちまちぱっと火がついて、たくさんの煙をむくむくとはきだした。一つのボールからは、黄いろい煙、もう一つのボールからは赤い煙が、ずんずんと波のうえにたちのぼるのであった。
「ほら、はじまった。誰か、船のなかから、へんじのかわりにあの煙をだしたのだ。いよいよこれはへんなことになったぞ」
老紳士は、ふなばたにつかまって、煙をにらみつけた。飛行機は、煙のあがるのをまっていたらしく、このとき機首《きしゅ》をめぐらして、ずんずんもときた方にかえっていった。
「船長、船長!」
老紳士は、こんどは船長をよびだした。船長とて、このへんな事件をしらないではなかった。船員のしらせで、さっきから船橋《ブリッジ
前へ
次へ
全115ページ中21ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング