われた。あれを見ろ、行手の丘陵の上から、こっちへ向かって下りてくる」
 なるほど、博士の目は早い。教会の垣根のように、整然と並んで、人造人間と思われる部隊が、例のすり足の行進で、ざくざくと、こっちへ向かってくるのであった。
 博士は、車を停めると、双眼鏡《そうがんきょう》をとりだして、新手《あらて》の人造人間部隊をじっと睨《にら》んでいたが、
「おお、うしろに、ハンスがいるではないか。あいつ、ドイツ軍のまわし者だったんだな。ち、畜生!」
 ハンス? 私は、双眼鏡をもっていなかったので、博士のように、ハンスの顔を、はっきり認めることが出来なかったが、しかし丘陵を駈け下ってくる人造人間部隊の一番後方に、一台の快速戦車があって、その掩蓋《えんがい》から、一人の将校が、首から上を出して、人造人間部隊を指揮しているらしいのが見えたが、多分それがハンスなのであろうと思った。
「おお、ハンス奴《め》。ナチスの旗を立てている。なに、モール博士、降服しろと信号を送っているぞ。な、なまいきな奴だ」
 博士は、かんかんになって怒りだした。そして、一層《いっそう》早口《はやくち》になって、ハンスを呪いだした。
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