らばらになって、空中に飛び散ってしまったのである。その有様《ありさま》は、飛行機の空中分解と、あまりかわらなかったが、しかし、これは、何百というA型人造人間が、一せいに分解して飛び散ったのであるから、その壮観《そうかん》な光景といったら、なんといってあらわしたがいいか、見当がつかないほどだ。
ドイツ軍が、人造人間で追撃させたことも、博士のために、無駄に終った。
大悪人《だいあくにん》だ
「さあ、この隙《すき》に、国境まで急行しよう」
博士は、自動車のハンドルをとった。私たちの乗った車は、空中にまい上ったA型人造人間の破片《はへん》が、まだ地上におちない先に、国境向けて、疾走《しっそう》を始めたのであった。
「向うに見えるあの丘陵《きゅうりょう》を越えれば、国境は目の下に見えるのだ。あと七八十キロ!」
博士は、元気なこえで言った。
私たちの自動車が、丁度丘陵の下までやって来たときに、博士はなに思ったか、
「あっ!」
と叫んで、大急ぎで、ブレーキをかけた。
「どうしたのですか、モール博士」
と、私は、博士の背中越《せなかご》しにこえをかけた。
「また、人造人間部隊が現
前へ
次へ
全42ページ中36ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング