人造人間の秘密
海野十三

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)襲来《しゅうらい》

|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)ドイツ軍|襲来《しゅうらい》
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   ドイツ軍|襲来《しゅうらい》

「おい、起きろ。ドイツ軍だ!」
 隣室《りんしつ》のハンスのこえである。部屋の扉は、いまにも叩き割られそうである。
 私は、自分でも、なんだかわけのわからない奇声《きせい》を発して、とび起きた。
 扉は、めりめりと、こわれはじめた。
「もしもし、今、扉を叩きこわしていられるのは、ドイツ軍のお方ですか」
 私は、いそいでズボンをはきながら、入口の方へ、こえをかけた。
「おどけたことをいうな。この際に、ひとをからかうもんじゃない」
 ハンスは、扉をこわすのをやめて、裂け目の向こうで、ふうふう一と息をついている。夜光時計《やこうどけい》をみると、ちょうど午前三時であった。
「おい、ハンス。これから、どうするつもりか」
「すぐフランス国境へ逃げださないと、もう間にあわないぞ、手取《てっと》り早く、用意をしろ。――おい、早くここをあけないか」
「なんだ
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