で、
「博士、この人造人間は、どうしますか」
と、たずねた。
博士は、車上にかがんで、受話器を耳にあてて、何かの音を聞いていたが、このとき髯《ひげ》もじゃの顔をあげ、
「この人造人間は、ここで片づけていく」
「片づけていくとは……」
「なあに、壊《こわ》していくのさ」
「そんなことが出来るのですか」
「出来るとも。わしが設計したんだもの。しかもこのA型人造人間も、ハンスの持っているB型人造人間も、じつはどっちも、不完全なんだから、こわすのは、わけなしだ」
博士は、妙なことをいいだした。
「不完全ですって。なにが、不完全なんですか」
「そのわけは、ちょっと簡単にいえない。が、要するに、ちょっとやれば、すぐ壊《こわ》れてしまうようなものは、不完全の証拠《しょうこ》だ。わしは……」
といいかけた博士は、そこで急にことばをきって、熱心に受話器から流れ出す音をきき始めた。
「おお、そうか。いよいよやって来たか」
「やって来た? なにがやって来たのです」
「人造人間部隊の襲来《しゅうらい》だ。おそらく、お前たちが出発してすぐその後から、ドイツ軍がくりだしたものだろう。おお、見える見える。も
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