いるものであることは始めてしったが、そのA型人造人間の発明者であるモール博士が、それを停めたり、また走らせたりする器械をもっているのは、ふしぎなことではない。
「そんなことは、なんでもないが、ベン隧道《トンネル》の下の、ドイツ軍の秘密の地下工場で、早速《さっそく》このようなりっぱな実物《じつぶつ》をつくりあげてしまったことは、腹も立つが、なんとおどろくべき、製造力だろう」
 と、さすがの博士も、舌をまいた。
「博士はこれから、どうされるのですか」
「わしかね。わしは、やはり国境を越えて、フランスに入るつもりだ。君にあって、たいへんうれしいが、あと、ハンスのことが気がかりだが、仕方があるまい。では、君たち、わしの自動車に、一緒にのったがいい」
 博士は、車上から手招《てまね》きをした。
 ニーナは、さっきから、道傍《みちばた》に身体をなげだして、死んだようになって、疲れを休めていたが、これを聞くと、むくむくと起きあがって、博士の自動車の方へ、よろめき歩いて行った。私も、ニーナにならうより外はない。しかし、この人造人間を、このままにしておくのは、たいへん勿体《もったい》ないことだと思ったの
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