も、敵とたたかえるのね。まあ、すばらしい」
 その足で、私は、フリッツ大尉の部屋へ飛びこんだ。もちろん大尉は、ベッドの中で、ぐうぐういびきをかいて寝ていた。大尉の上衣が、壁にかかっている。私はそのポケットを探した。一束《ひとたば》の鍵が、手にさわった。私は狂喜《きょうき》した。それこそ、あの人造人間の指揮塔の扉の鍵だったのである。私はニーナの手をとって、階段づたいに、人造人間のいる三階へ、かけのぼって行った。
 ニーナは、その途中で、私に、こんなことをいった。
「なにもかも、お芝居のように、うまくいくのね。あんまり、うまくいきすぎると思うわ。それにしても、フリッツ大尉は、なんというだらしない人でしょう」
 ニーナは、あきれている。私とて、じつはこううまくいくとは、思っていなかったのだ。脱出方法のことや、大尉が、無造作《むぞうさ》にポケットになげこんだ指揮塔の鍵束《かぎたば》のことなどは、ちゃんとしらべてあったのだが、それにしても、こううまくいくとは思いがけなかった。廊下にも階段にも、歩哨《ほしょう》一人、立っていないのだ。
 私たちは、らくに、指揮塔の中に忍びこむことが出来た。
「これ
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