いろいろと昼間の出来ごとを質問した。しかし私は、一切、口を緘《かん》して、語るのをさけた。ニーナは、ついに腹を立てて、寝てしまった。
午前三時!
ついに、その時刻となった。私は、その時刻こそ、脱出するのに最上の機会だと思って狙っていたのだ。
「ニーナ、お起きよ」
私は、ニーナを、ゆすぶり起した。
ニーナは、びっくりして、藁の中から起きあがった。私が、脱出のことを話すと、ニーナはあまりだしぬけなので、俄《にわ》かに信じられない顔付だった。
「脱走なんて、そんなこと、出来るの」
「うん、出来るのだ。人造人間を使って、ここを脱《の》がれるんだ」
「ええ、人造人間? そんなこと、出来るのかしら」
信じ切れないニーナを、ひったてるようにして、私は窓を破って、廊下へ出た。もちろん私は、例の黒い筒を、背中にしっかりと背負って、両手は自由にしておいた。
「ドイツ兵に見つかったら、どうなさるの」
ニーナは、心配げに、たずねた。
「柔道で、投げとばすだけだ。柔道のことは、ニーナも知っているだろう」
と、私は、投げの形をして見せた。
「ああ柔道! 知っている、あたし。日本人は、ピストルがなくて
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