また、別なキイが、技師の手によって、叩かれる。
 かつッと、金属製の靴が鳴ったかと思うと、すぐさま四列|縦隊《じゅうたい》が出来、ついで、この縦隊はすッすッすッと、小きざみな足取《あしどり》で歩きだした。生きている兵士の二倍ぐらいの速さである。
「全速《ぜんそく》、駈《か》け足《あし》、おい!」
 ひゅーンと、妙な機械的な呻《うな》りがしたかと思うと、人造人間縦隊は、私たちの入っている指揮塔のまわりを、まるで、玩具《おもちゃ》の列車のように、隊伍整然《たいごせいぜん》と、そして目がまわるほどの速さでまわりだした。生きている人間が、こんな速さで走ったら、目がまわったうえ、心臓破裂で死んでしまうだろう。
 フリッツ大尉は、それに引きつづいて、いろいろな号令をかけた。人造人間は、まるで人間とかわらぬ運動をした。どんな複雑な号令をかけても、配電盤のキイの叩《たた》き方によって、ちゃんと別々にうごくのであった。そして人造人間の兵士の行動は、どこまでも正しくあり、そしてどこまでも勇敢であった。
 そうであろう、機械人間であるから、死をおそれる神経がないのであるから。
 大尉は、ときどき私の顔色をう
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