部隊のために、あべこべにわれわれが檻の中に閉じこめられてしまったような錯覚《さっかく》をおこした。それほど、人造人間部隊はいかめしい。
 そのとき私は、丁度向こう側に、大きな箱のようなものがおいてあるので、何だろうかと、いぶかった。
「あの箱みたいなものは、何ですか」
 と、私は、フリッツ大尉にたずねた。
「おや、お前は、勝手なときに、口をきくんだなあ。あの小屋のことが知りたいのかね。見ていれば、今にわかるよ」
 そういい捨てて、フリッツ大尉は、右手をあげた。それは、試験始めの合図《あいず》であった。一人の技師が、配電盤のうえについているスイッチを、ぱちりと入れ、そして計器の表をみながら、ハンドルをまわした。他の一人が、九千五百、一万……と、しきりに数字を読みあげる。
「右向け、右!」
 フリッツ大尉が叫ぶと、もう一人の技士が、配電盤上のタイプライターのキイのように並んだ釦《ボタン》を、ぽんぽんぽんと叩いた。とたんに、人造人間は、一せいに右へ向いた。生きている軍隊よりもあざやかに、まるで、珠算《しゅざん》のたまが、一せいに落ちるようであった。
「四列縦隊で、前へ!」
 ぽんぽんぽんと、
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