を押して開いた。そして私の背中を、うしろからついた。
 私は、全く気をのまれてしまった形だった。なぜといって、扉がひらいての瞬間から、私の眼は、室内に軍隊のように整列しているぴかぴかの人造人間のすばらしい群像に吸《す》いつけられてしまったのだ。
 なんというりっぱなモール博士の研究であろう!
 それとともに、なんという手際のいいドイツ軍の製造技術であろう!
「さあ、あの台のうえにある金属製の檻の中に入って見物しよう」
 大講堂を十個ぐらいうち貫《つらぬ》いたようなこの広い試験室の中央には、噴水塔《ふんすいとう》のようなものがあって、上は、金属棒をくみあわせた檻になっていた。そして、その檻の中には、試験官らしいドイツ人が三四人入っていて、机の形をした配電盤の前に立っている。人造人間をうごかすためには、強烈な電波を使うから、電波の侵入をふせぐこのような厳重《げんじゅう》な檻の中に入って試験をしなければならないのであった。
 フリッツ大尉と私とは、最後に、檻の中の人となって、扉を閉じた。
 檻の中から、整列している人造人間の部隊を見下ろしたところは、奇観《きかん》であった。なんだか人造人間の
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