私が今、見ている機械は、しきりに原型《げんけい》をうち出している。原型は、普通は、かたい鋼鉄《こうてつ》でつくるが、この地下工場では、私の知らない灰色のセメントのような妙な粉末を熔《と》かして固《かた》めるのであった。
「どうだね、セン。君の気に入るように、製造工程は進んでいるかね」
フリッツ大尉は、私の気をひいた。
「さあ。おっしゃることが、私には、すこしも分りません」
私は、すばらしい製造工程の進行についてのおどろきを、ひたかくしに、かくしていった。ドイツ技術なればこそである。
夥《おびただ》しい数の原型が、どんどんつくられていく。一体、そんなにたくさんの人造人間を作ってどうするつもりなのであろう。
「おう、セン。こっちへ来たまえ。いよいよ出来あがった製品について、試験が始まる。君は人造人間の出来|具合《ぐあい》について、遠慮なく、批評をしてくれたまえ」
フリッツ大尉は、そういって、私をエレベーターにのせて、別室へつれて行った。 それは、三階ぐらい上のところにある部屋だった。この地下工場は、どこまで大きいのであろう。
廊下をちょっと歩いたところに、入口があった。大尉は、扉
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