き、折り返して1字下げ]
級長 まことに由々しき一大事か。
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こんどは誰も笑うものがない(間)。
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級長 ねえ皆。新学期|早々《そうそう》、これはまことに由々しき一大事だ。僕たちは、たしかに生徒たる本分を忘れていたようだね。
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生徒、賛否《さんぴ》両論ガヤガヤ。
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級長 どうだ皆、こうしようじゃないか。この由々しき一大事を突破するために、わがクラスは勉強組合というのを作ろうじゃないか。
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生徒ガヤガヤ。
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生徒 勉強組合ってなんだ。
級長 勉強組合というのはね、放課後、皆で学校に残るんだ。
生徒 残って、何をするんだ。
級長 残って、皆でその日習ったところを復習するんだ。復習するだけじゃない。委員をきめて、模擬《もぎ》試験をやるんだ。そして出来ない奴があったら、皆して分るとこまで教えっこするんだ。
生徒 放課後は運動したいね。体力をつけることも、第二国民には大事なことなんだぜ。
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生徒大勢「そうだそうだ」
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級長 じゃ夕飯《ゆうはん》[#「夕飯《ゆうはん》」は底本では「夕食《ゆうはん》」]がすんでから、誰かの家へ集ってやることにしよう。僕の家の会社に広い会議室があるから、お父さんにいってあそこを貸してもらおうや。
生徒 うまくゆくかなあ。
級長 きっとうまくゆくよ。
生徒 でも蝦原《えびはら》のような出来ないやつは、いくら教えたって出来やしないよ。
級長 なあにきっと、うまくゆかせるよ。僕にゃ、まだとって置きのいい手があるんだ。この手でやれば、どんなに出来ないやつだって、出来るようになるぜ。つまりこういう風に……。
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場面一転する感じの出る音楽。
生徒ガヤガヤ。
遠く自動車の警笛《けいてき》、口笛を吹いている行人《こうじん》、など街の騒音《そうおん》。
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級長 外が騒々しいね。暑いけれど、窓を閉めよう。
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