にくたくたとなる。
が、とど心靈は諦めの境地に達し、生前の好意を感謝したり、現在居る世界の樣子をぼつぼつと語り出す。
普通第一囘の招靈では、その心靈は、ほとんど闇の空間に置かれてゐると告げる。それが第二囘目になると、夕暮ぐらゐの明るさになり、第三囘第四囘と、囘を重ねるごとに、その心靈の環境はだんだんと明るさを増して行く。
何十囘に及んだ後は、曇り日ぐらゐの明るさになつたと告げる。そしてあたりの風物について語つてくれる。
あたりは廣々とした野原であること。花は咲いてゐないが、自分が花が見たいと思ふと、その直後にこの野原に美しく花が咲き出でると告げる。机が欲しいと思ふと、野原に忽然と机が出て來る。なんでも欲しいものは、自由に出て來るのださうである。
だが、その心靈は孤獨を告げる。野原に、自分ひとりで生活してゐるのださうである。ただ、いつだか老人の神主さんのやうな人が遠くを歩いてゐるのを見かけたといふ。心靈研究會の主事は、『その神主姿の人こそ、守護靈さんですよ』と、あとで解説してくれる。
それから日が立つと、死因をなした病氣の痛みはとれる。それがとれると、こんどは集團生活にはいる。
はじめは、同じ頃死んだ同性の者だけの集りである。そして知人は一人も見つからないので心細い。しかし孤獨で暮してゐたときよりは賑やかである。
一同は、守護靈さんを師として、毎日修行を重ねていくのである。それはなかなか面倒なことであり、娑婆のやうにいい加減で放つておくことは許されないので、骨が折れるさうである。
やがて試驗の日が來る。この試驗に合格すると、階段が一つ上る。そしていよいよ修行の内容がむづかしくなる。その代り自分の教へ子が成人が出來るし、その世界に於て、行動の自由が少しづつ附與される。
さうなると、心靈は、その世界を方々見物したり、また自分よりも先に死んで、ここへ來てゐるはずの親類縁者や友人たちを探しまはつて出會ふこともある。
それから先は、ますます修行を積み、やがて守護靈さんにまで昇格するのを目標として勵むのである。守護靈さんになるには、普通の心靈では、早くても四百年はかかるさうである。
守護靈さんになると、かずかずの技能が與へられる。一分間に千里を飛ぶことができたり、娑婆へ自由に日がへり旅行が出來たりする。そして守護靈さんだけの第四世へ入籍することが出來、そこ
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