たのです」
「じゃあ、出されたのはもうあんたを烏啼から保護しなくも危険はないという事態になったと考えていいのか」
「事態がそうなったというよりも、わしの実力を以てすれば烏啼の輩から危害を受けるおそれなしと当局が認めたせいですよ」
「あんたはこれから烏啼と一騎打をするのか」
「従来からも一騎打をして来たですから、もちろんそれを続けますよ」
「烏啼がどこに居るか、あんたは知っているのか」
「はあ、よく知っていますよ」
「当局は烏啼の所在が分らないといっている。あんたは当局に教えてやらないのか」
「訊かれもしないことについて喋《しゃべ》らないでもいいでしょう。当局には当局で、お考えもありまた面子《めんつ》もあるのでしょう」
「あんたは、烏啼が本当に安東の心臓を盗んだと思っているのか」
「はい。そう思っています」
「じゃあ、烏啼は何の目的があって安東の心臓を盗んだと思うか」
「恋愛事件が発生しているのですね」
「ぷッ」と新聞記者は噴《ふ》きだして「恋愛事件だって。しかし烏啼は男の子だろう。男の子が男の子の心臓を盗んだって一体何になろう。況《いわ》んや、言葉じゃ“心を盗む”とか、“心臓を自分の所
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