がしたと思う間もなく、奥から怪しい灰色の人ともけだものともつかぬものがはいだしてきて、兄さんに組みついた。兄さんはこれを相手にたたかい、はじめのやつはたおした。しかしあとからまたぞろぞろとはいだしてきて、兄さんにかかってきた。すごい力の奴だ。兄さんはついにピストルをうった。それでようやく相手はひきさがったが、兄さんはざんねんにも両足を折られてしまって、動けなくなった。そこで手だけを使って穴を出ようとしたが、どうしてもだめだった。穴の中では電池がたおれ硫酸《りゅうさん》がこぼれているうえに、水でぬかるみとなり、しかも穴の外は高くなっていてとてものぼれない。ざんねんだ。お前の来てくれることを祈っている。
いったい何奴《なにやつ》だろう、思いがけなく穴の奥から現われた奴は?
人間とは思われない。からだは人間の二倍ぐらいもあり、灰色の毛がからだ中に生えていた。しかしけだものでもないと思う。ちゃんと両足で立ち、声を出して話をし、穴の上を蝙蝠《こうもり》のようにとぶのを見た。足は蛙《かえる》のように見えた。そしてくさい。なにか、瓦斯《ガス》みたいなものを出すのだ。たしかに高等な生物だ。
いっ
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