雪魔
海野十三

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)恨《うら》めしげに

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)雪|下《お》ろし

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点、字下げの位置の指定
(例)[#地から3字上げ]一造
−−

 東京の学校が休みになったので、彦太少年は三月ぶりに木谷村へ帰って来た。村はすっかり雪の中にうずまっていた。この冬は雪がたいへん多くて、もう四回も雪|下《お》ろしをしたそうである。駅をおりると、靴をかんじきにはきかえて村まで歩いたが、電柱が雪の中からほんのわずかに黒い頭を出しているばかりで、屋根の見える家は一軒もなかった。
「この冬は、これからまだ三度や四度は、雪下ろしをせねばなるまいよ」
 と、迎えに来てくれた父親はそういって、またちらちらと粉雪を落しはじめた灰色の空を恨《うら》めしげに見上げた。
「五助ちゃんは何している? ねえ、お父さん」
 彦太は、仲よしの五助のことを尋ねた。
「ああ五助ちゃんか。五助ちゃんは元気らしいが、此頃ちっとも家へ遊びに来ないよ」
「ふうん。僕が居ないからだろう」
「それもあるだろうが
次へ
全29ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング